Tinypath〜日々書き綴る

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暗闇の世界から、息を吹きかえす

気がついたら、11月も終わりである。

「職業としての小説家」という本の中で
村上春樹氏が、心理学の河合隼雄先生を語る箇所がある。
ただ、河合先生だけに絞った章なのだ。

その中で、河合先生の駄洒落好きをこう評していた。
〜〜〜〜
河合先生はクライアントと向かい合うところで
多くの場合、魂の暗い奥底までその人と降りていく

それは往々にして危険を伴う作業だから
帰りの道筋がわからなくなるかもというところの

そのまま暗い場所に沈みっぱなしってこともあるかも

そのような場所で糸くずのようにべったり絡みつく負の気配
悪の気配を振り払うために
出来るだけくだらないナンセンスな駄洒落を
口にしないわけにはいかなかった。

〜〜〜〜〜
私は、一週間ほど、擬似体験というか
朝から晩まで、内的障害をもった人と交わった。
対象者は
知能が低いわけではなく、
反対に優れているほうなので、
一つ一つの言葉選びに始まり、深い闇の世界に一緒に向かうのには
相当の体力が要った。

そして、私だけは、この世界に帰ってこなければならない。
息の出来ない海底から、
光の差す海上めがけて、上へ上へと向かって泳ぐかのように
私にもユーモアやジョークは不可欠だった。

気持ちをわかるには、その世界に入らなければならず
しかし、そこからの生還は、労力が要る。
限界値に達し、家に帰り
鏡に映った自分の姿をみると、そこにはそれだけのエネルギーが
搾り取られたさまが見えた。

まるで、映画で見るアウシュビッツの収容所のエキストラが出来そうなほど
体は痩せ細っていたのだ
精神の疲労とはこういうことなのか。

彼らの内的深刻さは、そういうことなのだ。
正常な人間の生気を奪うモンスター。

一週間経った今、
あの一緒に過ごした一週間の異様さを改めて感じてしまう。

おかしいと言えるだけの結論に達するには、
一緒にいる間は気がつかない。
そこから、私自身が正気を取り戻しての今
初めて、深い闇の恐ろしさがわかるのだ。

ジレンマである。
私は、救えるのか。愛するものたちをその闇から救えるのか。





... 2018 / 11 / 27 (TUE)


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