Tinypath〜日々書き綴る

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何故、春樹氏は辞退したのか

ノーベル文学賞の選定委員の一連のスキャンダルから
今年は、この賞はない。

権力と愛憎関係が繰り広げられたような
彼らの関係は、
まるで壮大なスケールの映画の題材になるのでは?と
思うくらいだった。

どんな世界でもそういった醜聞はつきものか

そんなことから、今年限りということで
スウェーデンの文学者達が、代わりの賞を創った。
そして、その賞の
最終選考に日本の村上春樹氏も残ったが、
彼はこの時点で、辞退を申し出た。

常々、彼は
賞というものに対してこだわることなく
身銭を切って、本を買ってくれる読者こそ大切なのだと
語っていたが、
さて、本音はどこにあるのか?

また、気持ちの言うのは、変わっていくものであるから
彼の中でも何かしらの変化があったのかもしれない。

彼は、芥川賞とか直木賞とかとっていない

今、私は、2015年刊行の
「職業としての小説家」という本を読んでいる。
その中で、
そういったラベルがなくてもやっていけることに対して
彼の思いが書かれていたが、

では、今回のこの賞にたいしての行動は
やっぱりどう捉えたらよいのかと思う。

彼ももうすぐ70歳になる
最初の「風の歌を聴け」から約40年間
ずっと小説家という職業についていたことは
やはり、彼自身が思っている一つの才能を神様に与えられたのだ。

そもそも本を読む行為はとても好きで
当時、周りの誰よりも読んでいたということは自負していたが
小説家になろうとは思ってもなかった。

しかし、ある日のこと、
芝生の上でゴロリと
ビールを飲みながら、野球を観戦していたときだった。

ヤクルトのヒルトン選手がヒットを放った。
その時、村上氏にも何かしらの思いが舞い降りた。
「小説家になる」

色んなつらいこともあって、喫茶店を経営していたから
お金の工面に暗くなることもあっても
また、「小説家になる」という思いが
彼を奮い立たせた。

そこにはやはり目に見えない力が存在するように思う。

当時の苦労というか、
コテンパンに批評されたことも少し書かれてあったが、
芥川賞、直木賞をとったところで、
では、長く小説家である人は、どれだけいるのだろう?
と思えば、
獲れなかった村上氏にとっての
それは、いったいどんな価値をもたらすか。

1作だけ書くことは、誰でも出来る。
しかし、小説家という職業を生業とし続けるには、
続ける力がなければ出来ない。

そんなあまたのものをみてきた村上氏
彼にとっての価値観は、
40年間の積み重ねの中で、いく層にもなっているはずだ。


今日もまたじっくりこの本を味わってみたいと思っている。

... 2018 / 09 / 21 (FRI)


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